
『しゅうぞう様~、しゅうぞう様~・・・』
今度は何やら別の人格を持つ怨霊が私に話しかけてきた・・・
「私はしゅうぞうなんて名前じゃない、いったい何の用だ、誰だオマエは?」
『妖怪ななへんげと申します~字は七つに変化する~「七変化」と書くのでございます~』
「で、私が(しゅうぞう)とは?どんな字で書くんだ?」
『宗教の(宗)に漢数字の三、つまり宗三様で~ございます~』
——と漢字まで教えてくれて今度はなんと丁寧な悪霊さんであろうか——–
『あなた様には大変優れた知恵の持ち主である兄様がいらっしゃるので~ございます~その兄様の御名は(しゅうとく様)と申すのでございます~宗教の(宗)に徳川家康の(徳)と書いて宗徳様と申します~
そしてあなた宗三様はその兄様をその御身に宿すので~ございます~そしてあなた宗三様は宗徳様を出産なさり~
大切に~大切に~御育てになられるので~ございます~そしていずれは宗徳様は御立派な菩薩様となられ~世の人々から悩み苦しみをふり払われ~お救いになり~世界の救世主となられるので~ございます~
考えてみれば、世間でもよく「不幸の科学」の大山陵法総裁は仏陀の再誕であるとか「天地理教」の教祖、小山ミクには転輪王が憑いている、とか「(精神)分裂教会」(現在は世界切捨分裂家庭連合と名称変更)の教祖である、分 濁暗氏は二千年前に処刑された救世主『ノー・キリステ』の生まれ変わりだのと言い、いかにも、もっともらしい屁理屈をこじつけ宗教団体を立ち上げた経緯を聞いた事がある。
今思い起こしてみればまさに「こういう事だったのか!」と、同じような体験をした事で、それらの宗教団体の設立の経緯の真相を思い知らされる。
すると突然、急に私の下腹部が熱くなりだした。と、さらには本当に赤ちゃんの泣き声まで下腹部から聞こえてきたのである。
まったくバカげた話であるが、当時私にはそれが真実であり、男性が子供を出産するという事などあり得ないとはわかってはいても、完璧にその悪霊の作り話に騙され、すっかり信用してしまった。
最近のテレビ番組でも男性が出産するという内容のドラマがあったが、まさしくそれを地でいく展開であった。
「その赤子~兄の宗徳様の懐胎の経緯は~あなた宗三様も~すでに身に覚えがございましょう~
昨晩、羽衣をまとった千年妖怪の奥方様であられる天女たちが十数名~宗三様のところに降りたち~その子種を体内に受胎して授かった~あなたの兄様なので~ございます~
そしてその兄~宗徳様を~あなた宗三様の~体内に宿し入れたので~ございます~
あなた宗三様は世界で初めて男性として菩薩様を出産し~有名となるので~ございます~そしてあなた様は宗教団体を設立され~一躍世界的な教祖様となられるので~ございます~」
と怨霊たちにおだて上げられ、わたしはすっかりその気になり、世界初の天女とまぐわり菩薩を懐妊したという、今世紀最大の奇跡を起こす教祖様と成る事を確信したのである。