
「しかもその赤ちゃんはまるで菩薩様の生まれ変わりのよう! 」
そんな大見出しで世界中から注目されるという、まことにバカげた先走った事まで想像してしまった。
そしてさらに怨霊らの翻弄話は続く。
『あなた宗三様は~兄の宗徳様を~立派な菩薩様となられるまで~しっかりとお育てに~なるので~ございます~でなければ~世の中はもっと不幸な世界となって~しまうので~ございます~
そしてあなた宗三様は~『精神改革塾』という~宗教団体を~立ち上げるので~ございます~
兄の宗徳様にたずねれば~何でも全ての事が~お見通し~。世の人々を~一人五千円で占って差し上げるので~ございます~さすれば~一日に大勢の人々が救われて~あなた様も大金持ちになれる事は間違いないので~ございます~まずはあなた宗三様が~その修行を受けるので~ございます~まずはこれからあなた宗三様の~精神改革修行を行うので~ございます~』
————何で私が宗三で、兄の宗徳ちゃんを産んで育てる?・・・———–
———————誠にバカバカしいかぎりの話である———————————–
しかし私は本当にスタジオの中にこもり、本気で「宗徳ちゃん、宗徳ちゃん、私が弟の宗三でございまちゅよ~」と、まるで本当の赤ちゃんをあやすようにだっこし、グルグル、グルグルとスタジオの中を一日中歩き回っていた。
そんな中でも一瞬冷静な意識がよみがえり、
「オレってなんてバカな事をしているんだ!何が宗徳チャンだと!ばかばかしい!目潰しガーッだ!この怨霊ガキめ!」
とばかりにその赤子を床に叩きつけた。と、途端に宗徳様が『ギャ~ッ!』と泣き出したかと思うと、
『皆の者―っ!一大事でございますーっ!何て事をしたーっ!宗三が宗徳様をー!・・・』
「えぇーっ!大変でございますーっ!」
と、そこに次々とこぞって千年妖怪を筆頭に霊界の悪霊や天女たちが集まり出し、大騒ぎとなった。
『な、なんという事をするのでございますかーっ宗三さまーっ!あなた様は地獄に堕ちるのでございますーっ!』
私は、
「申し訳ございません、申し訳ございません、もうに度とこのような事は致しません、お許しください!お許しください、千年妖怪さまー!」
と無我夢中で悪霊や天女たちの前で懇願し、わんわんと泣き出しながら宗徳様をまたあやしだしたのである。
何とか怨霊や天女からはお許しを頂いたが、さすがは菩薩様、宗徳様の成長は早かった。あっという間に三歳ほどに成長し言葉も念力を通じて話し出した。しかも本当に悪霊たちの言う通り、宗徳様に聞けば何でも明快に答えてくれた。