
『ゆきはるさま~ゆきはるさま~』
またどこからか妙な女の子の声がしてきた。
「おわすれですか~ゆきはるさま~佐藤めぐみと申します~」
「こんどは何だ?佐藤めぐみ?知らないなー」
なぜか霊界の方々はダミ声の妖怪や悪霊を含め、言葉使いが丁寧だ。
『小学校二年生の時に一緒だった~佐藤めぐみで~ございます~』
「え、めぐみって・・・」
——————私はだんだん思い出してきた————————————————
そういえば、現在西東京市にある中原小学校の二年生の時にクラスで一緒だった、あのどんくさかっためぐみちゃん?・・・
体育の時間、ブルマを忘れてパンツ姿で体操してたっけ・・・
それから教室で大きなオナラをしてみんなに笑われ、ブチキレて大暴れした子・・・
なんとも怨霊の方から昔話を思い出させられるとは、これもまったく奇妙な話である。
それとこんな事も思い出してきた・・・遠足の時、山道のくだりを歩いていると急にめぐみちゃんが私の前を走り出し、突然崖に落ちて「キャーッ!誰かたすけてー!」と言って木にしがみついてぶらさがっていた事を・・・
「全くどんくさいヤツだなあ・・・」と思って見ていたらガキ大将のクラスメイトが助け出したっけ」
『なんてひどいことを言うのでございますか~私は悲しゅう~ございます~私はゆきはるさまに助けて頂きたくて~小芝居を打ったのでございます~』と。
——————-そういうことだったのか・・・—————————
「ごめんごめん」
——–いけない いけない、私は宗三としての精神改革修行中の身であった。全ての私の思考はお見通しだったのである———————————————-
私はさらに佐藤めぐみの事を思い出してきた。そういえば仲は良かった。
ただ話していて楽しく、友達として一緒に下校していた。特には異性として好意は持ってはいなかったが、小学校の帰り道は反対方向であるにもかかわらず、毎日自宅のあるひばりヶ丘団地の3階、玄関前まで送っていた。
担任の先生やめぐみちゃんのお母さんからも「二人共仲が良いのねぇ」と笑われたが、当時の私には意味もわからずピンとこなかった。
また学校の帰り道、公園にあるトンネル状の遊具の中でめぐみちゃんからキスを迫られ、びっくりしてその場からあわてて逃げ出した事があったっけ。
多分あの頃は女子はませていたが、男子は同じ年齢でも性意識の成長は女子よりも遅く、全く女子に興味などなかったように思う。
そして私は小学三年に上がる時、めぐみちゃんには特に何も告げず、居住地域の関係でそのまま埼玉県新座市の片山小学校に転校した。
めぐみちゃんの話はさらに続いた。
私が転校して間もなく、それが悲しくて団地の三階の窓から飛び降り自殺したと言う。私は全く知りもしなかったが、それからは自殺した罪で成仏が叶わず、常に私にとり憑いていたそうだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、私のせいで自殺に追い込んでしまったのですね、私は精神改革の修行をしてめぐみ様を必ず成仏させてあげます、お許しください、お許しくださいめぐみ様~めぐみ様~」
————私はまたわんわんと泣きながら手には数珠を掛け————————-
「私が思ったことは全てお見通しなのでございますね、めぐみ様~
めぐみ様~あなたは何と、おこころのお美しいお方でございましょうか~本心でございます~これは本心でございます~心の底からそう思うのでございます~」と。
私は一生懸命に心の底から、そう本気になって思い込もうと必死になって精神改革の修行、仏教で云えば観法を真剣に行じ、心を清めていったのである。
今になって考えればこれも全くバカバカしい話ではあるが、そこには本当にめぐみちゃんの怨霊がいると思い込み、またスタジオ内をグルグル~グルグル~と回りだしたのである。