
今度は妖怪怨妙心に入れ替わって三年五組の霊が取り憑いてきた。
ともかく三年五組の子供たちの霊は皆仲が良くて何屈託なく明るかった。本当にそこに存在しているかと思えるほどである。
そしてなにかと何でもかんでも生姜で物事を解決しようとするヘンなところがあった。
ある時などバイトの北原君が風邪で休むという事になった時、子供たちは
「じゃ、ボクが生姜を届ける!」「いや俺が行くよ!」「あたしよあたし!あたしが届けるわ!」
とばかりに大騒ぎであった。
またある時など、私が脱会した嘘か学会の婦人部の人たちが集まり、何とか私を説得してまた会に引き戻そうとやって来る、という事があった。
それを知った子供たちは、早速その事を私に教えてくれて、その対処方法も伝授してくれた。それが一風変わっていたのである。
ともかくその婦人部の人たちは嘘か学会に洗脳されているから生姜の解毒作用を使って目を覚まさせるのが一番だという事であった。
ではどうすればいいのかと聞くと、まず高級肉まんを渋谷の「東横のれん街」に行って買ってくる。それをおみやげとして渡せば良いそうだ。
なぜ東横のれん街の高級肉まんが良いのかと聞くと、それには上等な生姜がたっぷりと使われており、洗脳解毒効果が抜群だからだそうだ。
そして早速私は言われた通りに渋谷にある東横のれん街にそれを買いに出かけた。
当然三年五組の子供たちも心配だからとついてきた。そして行く時も自分で運転してはだめで、タクシーを使うこと、と指定された。やはり私は常に悪霊に狙われているためか、車の運転は厳禁であった。
自宅から渋谷に向かう途中の246号線がなぜか渋滞どころか停滞していた。子供たちは「様子を見てくる!」と言って先の様子を見に行った。
すると案の定、バイクと車の人身事故が起きたばかり、との事だそうだ。
早速私が運転手さんに「この先で人身事故が発生したから、住宅街を抜けていきましょう!」と伝えると、その的確なアドバイスに驚いていた。
—————–全てはこの三年五組の子供たちにはお見通しなのである———-
と私は更に確信を深めた。
そして渋谷駅に着くと、確かにその東横のれん街には高級中華まんのお店があった。そこで特別に高価な肉まんを3個ずつ人数分買って用意した。
そしてどのように嘘果学会婦人部の人たちを迎えたら良いかという点についても事細かに指示された。
まず身なりはきちっとしたスーツで出迎える事。またその時も家の中で待つのではなく家の前にある電柱の横に立って待ち、丁重に接する事、という事だった。
その様な来客の対応をした事は初めてだったが、それ以来私は三年五組の子供達に教わった通り、大切な方をお迎えする時などはその通りに実践している。
そして間もなく嘘果学会の婦人部人三名が本当に自転車に乗ってやってきた。
三年五組のみんなが指示した通りおみやげの高級肉まんを三個ずつ渡すと、驚いた様子で皆一目散で「サイナラ~」とばかりに何も言わず逃げていった。
————–三年五組の精霊の言う事は全て真実であった・・・———————
